正岡子規と「坂の上の雲」の感想文

寺本匡俊 1960年生 東京在住

2015-03-01から1ヶ月間の記事一覧

小園の記  (第53回)

子規のファンは、彼の文章が明るいと口をそろえて言う。もちろん「不治の病で苦しみながらも」という、言わずもがなのことを略してのことだが。確かに子規の随筆や日記は、ユーモアありリズム感あり、疼痛さえ興味の対象にしてしまう好奇心あり、よく食べる…

花は嵐に誘われて (第52回)

遠藤周作の力作「王の挽歌」の主人公、大伴宗麟はキリスト教の布教者兼ゴマ商人のフランシスコ・ザビエルに会ったためかどうか知らないが、キリシタン大名になった。天正の少年使節もミニ・ザビエルのような服装をして大伴家から派遣されている。宗麟の弟は…

ありがたく、このたび大命  (第51回)

文庫本第四巻の「旅順総攻撃」によると、明治天皇は「人物の好み」があって、西郷隆盛、山岡鉄舟、乃木希典といった「木強者」がお好みであったらしい。木強者とは鹿児島の言葉で、「大胆な人」(広辞苑第六版)であるが、どうやら大迫尚敏や同じ章に出てく…

津軽海峡秋景色  (第50回)

こうして「坂の上の雲」や日露戦争の資料を読んでいると、当時の日本はずいぶんと時代の巡り合わせに恵まれたものだと思う。戦いに勝つためには戦意も軍備も不可欠だが、大和魂だけで大戦争に勝てるものでもない。 時代の巡りあわせということについて、ここ…