正岡子規と「坂の上の雲」の感想文

寺本匡俊 1960年生 東京在住

2017-08-01から1ヶ月間の記事一覧

江戸っ子  (第133回)

乃木さんが八百屋お七のような下世話な噺を知っていたのは、単に江戸の生まれ育ちだったからかもしれない。「殉死」によれば、誕生から十歳まで長州の支藩「長府藩」の上屋敷で暮らした。 私は学生時代に山口の萩にゆき、再建された松下村塾などを、地元の同…

八百屋お七  (第132回)

司馬遼太郎は乃木希典を様々な表現で描写する。司馬文学における乃木さんとは、例えば「自分の精神の演者」であるとか、「精神美の追求」とか「傾斜」とかいった形容が付く。 乃木さんにとって、自分は自分の人生という劇の役者であり、それを自分で演出する…

乃木さん  (第131回)

小説「坂の上の雲」の感想文という形で、乃木希典大将を扱うのは難しい。乃木さんには、毀誉褒貶の歴史がある。「あとがき」から始めよう。文庫本第八巻に収められている「あとがき 四」の冒頭部分。「まず旅順のくだりを書くにあたって、多少、乃木神話の存…