正岡子規と「坂の上の雲」の感想文

寺本匡俊 1960年生 東京在住

2017-02-01から1ヶ月間の記事一覧

国家を益し兵士を利す  (第98回)

前々回に書き留めた内藤鳴雪先生の句、「君行かば山海関の梅開く」は、ただ単に名所を織り込んだものではなく、子規が従軍した近衛師団が、ここに行く予定という噂があったからだ。後日触れるが、この噂のことは子規自身が「従軍紀事」に書き残している。 私…

その人の足あとふめば風薫る  (第97回)

先般、私はここで軍事好きの「坂の上の雲」ファンも、文学好きも、正岡子規の一面しか見ていないと大見えを切った。撤回しません。「坂の上の雲」にも同様のことが書かれている。新しい国家をつくった国民的高揚の中で、子規も「一枚張りのロマンチスト」に…

吾人、文学に志す者  (第96回)

子規はせっかく入った東京大学の文学部なのに、中退せざるをえなくなった。司馬さんすら「子規も、よくなかった」と書いているように、多分に自業自得だった。二回も落第しているのだ。それも、全力で試験に取り組んだ結果ならともかく、年譜によると試験を…