正岡子規と「坂の上の雲」の感想文

寺本匡俊 1960年生 東京在住

2018-02-01から1ヶ月間の記事一覧

竹矢来  (第169回)

写真は近所の竹矢来です。わざわざ説明用の看板まで立てているのは、このような昔ながらの建築物なども見せている公共施設だからだ。 この「やらい」というのは、「あっちに追いやる、近寄らせない」というような意味で、この程度の低さでも、人や犬が自宅の…

土城子  (第168回)

文庫本第五巻「二〇三高地」では、児玉源太郎の一行が旅順の地に到着するはずの12月1日、乃木希典は早朝に「わしは前線視察に出かける。児玉とは土城址附近で落ち合うことになるだろう」と軍司令部に言い残して出かけてしまった。 この言い置きが不鮮明で、…

柳樹房  (第167回)

この日、1904年の12月1日は、くりかえすと児玉や田中の一行は忙しい。第三軍司令部にとっては、災厄に近い日になる。文庫本第五巻の章「二〇三高地」によると、汽車は柳樹房の近くに停まった。ただし、駅がなく、係員が踏み台を置いた。児玉たちが着いたのは…

葡萄酒と洋食  (第166回)

葡萄酒に洋食。いずれも殆ど死語になりにけり。これらを美味しく頂けるはずだった旅順鉄道の汽車の中、児玉源太郎と共に第三軍の戦場へと向かう参謀田中国重少佐は、11月30日に行われているはずの二〇三高地攻撃の結果を気にしながらの旅となった。もっと気…

弥助砲  (第165回)

大山巌と児玉源太郎が、児玉の二回目の旅順行きについて相談する場面は、先に執筆された「殉死」と、「坂の上の雲」二〇三高地の章とでは趣が異なる。「殉死」では、乃木を罷免してはどうかという大本営からの勧告を、大山は拒否した。だが、さてどうしよう…