正岡子規と「坂の上の雲」の感想文

寺本匡俊 1960年生 東京在住

子規庵のご近所  (第197回)

新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。去年は還暦を迎えた私ですが、みなさま同様、コロナ禍に仕事も暮らしも翻弄されました。高校を卒業して故郷を離れて以来、海外長期駐在中は除き、かならず静岡に帰省して実家や親戚宅に泊まり、墓参りをしてきたのですが感染症には勝てない。

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初日の出 今回は元旦の写真集です。


そういうわけで、今年は暮れ正月を子規庵のそばの拙宅で過ごし、運動不足解消と気分転換のため、元旦からご近所の散歩です。正岡子規が人生最後の時期に暮らした自宅が、今の子規庵です。近くに陸羯南中村不折の家があり、高浜虚子河東碧梧桐が下宿して、鴎外や真之が訪問してきた。

元日(2021年1月1日)の朝、散歩したのは子規庵のある東京都の台東区と、すぐ南にある荒川区です。ゆっくり歩き、初詣も兼ねて1時間ぐらい。早朝でしたので、一か所を除き、ほとんど人出は無し。幸いこの正月は元日も二日も、快晴で風もなく、寒さで震え上がるようなことはありませんでした。マスクが邪魔ですが。


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羽二重団子 本店

今回は子規の作品に出て来る神社仏閣や、近所の地名などの写真を乗せます。羽二重団子は、彼だけではなく漱石ほか同時代の明治文学にも登場します。江戸時代の創業で、もちろん今なお現役。この正月に元旦から開店している老舗の意地。次の写真は、その団子屋から上野の山に登る芋坂の入り口に立っている。

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羽二重団子と芋坂の出入口は、かつて音無川という、北区の王子のほうから掘った新堀(にっぽりの語源、農業用水と生活用水を兼ねた人工河川)に面していました。今は暗渠になっていて地面の下のは排水溝になっているらしいですが、先の戦争のころまでは、蛍が飛んでいたと聞いたことがあります。

音無川をはさんで、羽二重団子の筋向かいにあるのが善性寺です。これも江戸時代の地図に載っている(ここから北は田んぼと畑ばかりですが)。二枚目の写真は境内にある大きな大黒様。三枚目は、実質的にお寺の敷地の中にある隼人稲荷神社。ここの狐が見事です。神仏習合の名残なのか、ときたま若いお坊さんが神社の掃除をしているという、一神教の信者には信じられないであろう光景を目にします。


このあたりの神社や寺院の方々は、目が合ったり近くを通ったりすると、むこうから挨拶してくださいます。かつて住んでいた京都の有料の観光地とは大違い。善性寺には横綱双葉山石橋湛山のお墓もあります。桜とイチョウの黄葉がお見事。

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谷中方面に歩いていくと、天王寺があります。これも江戸時代からある名刹。宗旨替えがあり、いまは天台宗です。子規の句や随筆で、「塔」と出てきたら、この天王寺の塔です。幸田露伴の「五重塔」。残念ながら消失し、今は礎石が残るのみです。境内には井戸もあるし、松の木は冬になると尖がりコーン状態になります。

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最後に、道灌山方面にある諏方神社のご案内です。ちなみに、諏方神社は谷中と新堀の鎮守の神様であり、拙宅の地域はこちらが初詣先の筆頭であるのですが、子規庵のある根岸は、鶯谷駅の東にある元三島神社が鎮守です。

漢字表記は鳥居に「諏方」、門柱に「諏訪」とあり、古文書も両方あるそうなので、おおらかな神様。諏訪湖にある諏訪神社の流れです。なお初詣は早朝にも拘らず長蛇の列で三密状態。諦めて、翌二日(これを書いている日の明け方)にお参りしました。

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ほかにも元旦には、残念ながらここに載せられるような写真を上手く撮れなかったのですが、セキレイオナガメジロと鳥の姿や鳴き声に触れることができて、今年こそ良い年になるはずだと確信しております。



(おわり)



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うちのマンションの最上階より、元日の富士山遠景  (2021年1月1日撮影)













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